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2004/03/20

医療事故の定義がぶれてきた?

副題:入院患者の10%は重大な医療事故に遭っているのか?

年度末はどのお役所も大忙しですね。
入院者の1割超に医療事故、半数は防げた可能性 厚労省
(朝日新聞)
入院中の事故10人に1人 厚労省研究班が初調査(共同通信)

 で、今回の報道にある

医療事故で死期が早まったり、入院延長されたりした患者は10.9%
というこの結果はにわかには信じられません。調査結果の原文を見てみたいものです。

 この4月から一部病院についておこなわれる医療事故報告制度での「事故」の範囲には以下が含まれます。

本来予定されていなかった処置や治療(消毒、湿布、鎮痛剤投与等の軽微なものを除く)が新たに必要になった場合や、新たに入院の必要が出たり、入院期間が延長した場合等をいう。
 報道のとおりなら、対象施設は4月からは全入院患者の10%を医療事故として報告せねばなりません。多すぎです。仮に以下が10.9%なら、理解できなくもない数字です。
 大学病院や中規模の病院など7施設から、入院患者100人ずつのカルテを無作為抽出。うち予定外の再手術、術後の合併症、院内感染、転倒外傷などで患者が被害に遭った事例を、ミスの有無は問わずに「事故」として分類した。
 厚生労働省による医療事故の定義はどちらなのでしょうか。重大な事例のみなのか、とにかく有害な事象全てを含むのか。上記の医療事故報告制度のページを見ると、文字通り「グレーゾーン」があります。軽微な処置・治療を要した事例です。たとえば、
「糖尿病治療薬が予想より良く効いて低血糖となり、あめ玉を舐めたら治った」
今回の10.9%はここまでを含んでいると考えるのが妥当なところです。さらに軽い事象として、被害に遭ったけれど治療は要さなかった例はヒヤリハット事例報告対象です。
「糖尿病治療薬が予想より良く効いて低血糖となり、様子を見ていたら治った」
 ここまでを事故と呼ぶのかどうかをはっきりさせないと、やっぱり数字を出しては語れないように思います。医療事故の定義を広く取れば、入院患者の10.9%が事故にあったという記述は正しいです。しかし、死期が早まったり、入院延長されたりした患者は10.9%ではないはずですが…。 

 ちなみに、私は医療事故の定義として、上記グレーゾーンを除いた「厚生労働省に報告する範囲の1と2」にしてはと思います。具体的には以下です。

1. 明らかに誤った医療行為や管理上の問題により、患者が死亡若しくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例。
2. 明らかに誤った行為は認められないが、医療行為や管理上の問題により、予期しない形で、患者が死亡若しくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例。
 もちろん一部の施設においては、従来報告対象外だったグレーゾーンも含めた医療安全にかかわる全事例の収集・分析を行うことで、どんな定義での数字を求められても正しく答えられるはずです。これこそがマスメディアや一般市民の誤解を防ぎ、ひいてはより安全な医療現場への実現につながるのではないかと思っています。
一般的な医療事故の定義について知りたい方はこちらへ
リスクマネジメントの実践
(日本看護協会)
横浜市立大学病院改革委員会
医療事故学(1)医療事故とは(弁護士の藤田康幸さん)

参考過去記事 医療事故の報告を義務づける範囲が狭すぎる
続報 「入院者の1割超に医療事故」はウソではないのか?

Mar.26少し加筆しました。Apr.6,リンク追加。

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