怪談 雛祭絡繰人形(ひなまつりからくりにんぎょう)
今回10年ぶりに赤坂の某料亭にて、「がまの油売り」を上演しました。ちなみに前回は大分の旅館だったと記憶します。
啖呵売「がまの油売り」の口上のバリエーションの中には、客を最初に惹きつける道具として、「からくり人形」が入っていると称する棗(なつめ)を使うものがあります。実際にはからくり人形は出現しないままに油売りに移ってしまい、そのまま終わってしまいます。
リンク: 【上方落語メモ第4集】その156 / 蝦蟇の油.
そこで客から「からくり人形はどうした」と言われたときの対応を往きの地下鉄の車内で着想したので紹介します。「がまの油売り」のアンコールとしても最適だと思います。以下は、上演日が3月3日、棗の中にはライオンの人形を入れておいた場合の内容です(笑)。
●伏線
本編のがまの油売りの口上内では、この人形についてこのような描写があります。
「つかつかつかっと歩みますれば虎の小走り虎走り、後ろに下がれば雀の駒どり駒返し、孔雀霊鳥の舞だ」
●本編 「怪談 ひな祭からくり人形」
-油売り終了
残った客「おい、それでからくり人形はどうした」
香具師「この中に入っておる。開けて進ぜようか? ただし、この人形は天の光、地の湿気を帯びて陰陽合体いたして初めて命を吹きこまるるものにて、このような宵の口のビルの一室では舞いはせぬぞ」
客「かまわん、見せてみろ」
-香具師は仕方なさそうに棗を客に手渡す。客が蓋を開けようと手をかけたところで、
香具師「おおぉ、大変なことを思い出した。この人形は元々さる名家に古くから伝わる雛人形七段飾りの随臣を、無理矢理に引き剥がしてからくり人形に仕立て直したものにて、まさに本日弥生の3月3日に棗の蓋を開けて見た者には、虎の姿となって襲いかかり末代までたたると言うが、それでもお開けなさるか。そうか、それではそれがしは目を逸らしておる故、ご自分でお開けなされい。」
-客がおそるおそる棗の蓋を開けると、ライオンの人形が入っている。
香具師「おおぉ、虎がライオンに豹変しているー、おなじみの『怪談 ひな祭からくり人形』の一席でございました」
-座布団に正座し、扇子を前に置き一礼して終了。
というわけで、昨日は人形登場の時にウケすぎて、サゲまで語れなかったのでここに記載しておく次第です(笑)。
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