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2012/06/20

医療用のMVNOをつくろう

昨年の秋ごろ、こちらのサイトのインタビューで触れたのですが、少し肉付けしてみました。まだ技術的・法的に何か見逃している課題があるかもしれません。しばらくの間はちょこちょこ書き直すかもしれませんが、とりあえず公開してみます。

MVNO(Mobile Virtual Network Operator)というのは、無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供している事業者のことで、たいていは独自の付加価値をつけてサービスを提供しています。私自身は、以前某社のセミナーの参加と引き替えにもらった日本通信のbモバイル3Gが初めてのMVNO体験でした。その便利な通信料金体系に、いたく感激したものでした。同社はiPhoneをdocomoの回線で使うためのSIMも出しています(私は使っていませんが)。

医療分野でIT のメリットを享受するためのインフラとして、このMVNOがあるといいなと思いたったのです。これは患者と医療専門職(特に医師)の両方に役立ちます。

患者のためのMVNO

 携帯電話会社は、私たちにさまざまなものを提供してくれます。たとえば認証、課金、端末から上り側(3G回線)と下り側(bluetooth)の通信環境、ICカード、ストレージです。これはPHR(Personal Health Record)のインフラとして格好の環境です。

 まずは認証です。携帯電話を契約すると、キャリアは利用者に対して携帯電話番号を割り当てますが、医療用MVNO業者はその番号をPHR上での患者IDとして運用します。この携帯電話番号を名寄せに使うのです。そのためには契約が切れてもその人が生きていると推定される間は番号の再利用をしないように決めておく必要があると思います。その分基本料金が上がってもよしとしましょう。この電話番号を使えば、複数の医療機関の連携のインフラとなります。

 次は課金です。携帯電話に内蔵されたICカードで、おサイフケータイ機能と同様に、診察券機能、保険証機能を付加します。医療費の自己負担を携帯電話の電子マネーから引き落とすことも、QuickPayなどでカード払いにすることも、電話代といっしょに引き落とすことも可能になります。PHRの会費も電話料金といっしょに請求できます。

 さらにbluetoothなどの通信機能によって、さまざまな医療機器とクラウドを繋ぐデータハブとしての役割を果たすことができるでしょう。

 次はストレージです。Micro SDカードのようなストレージは、PHRの中身を保存します。同時にそれは業者のクラウド・コンピューティング環境にも保存されます。携帯電話を正としてクラウドをバックアップにしても、クラウドを正として携帯電話をキャッシュにしても良いでしょう。このPHRストレージには、医療機関の端末からUSBケーブルもしくはクラウド経由でデータを格納します。携帯電話は手回し発電などさまざまな電源で駆動できるので、災害時などでもそのオフラインデータが役に立つはずです。
 PHRだけでなく、携帯電話のスケジュール機能と組み合わせることで、診療予約の確認や変更、薬切れのリマインダーなどが実現するでしょう。

 セキュリティの面ではひと工夫必要だと思います。現状の普通のスマートフォンでは、医療情報の機密性を保てないと思われるからです。そこは端末内にセキュアな仮想端末を別に構築して普通のスマートフォン環境との通信を禁止し、そこだけを医療領域とするような仕組みが必要かなと思います。

 プライバシー問題の回避や同意取得の一元化にもMVNOが役立つかもしれません。例えばそのMVNOと契約するときに、診療情報の二次利用の同意取得をMVNOが代行するようにしておけば、そのMVNOに加入している患者に対する医療機関などの同意取得事務負担が軽減されると思います。

医師のためのMVNO

 ここでは携帯電話の端末も含めて考えます。このMVNOには製薬会社なども参画したいと考えるのではないでしょうか。あるMVNOが医師専用スマートフォンを、しかも一般より低価格で提供するかもしれません。安くなった分は製薬会社が負担します。製薬会社はその負担と引き替えに、医師とのコンタクトの手段を得るわけです。MR(医薬品情報提供者)の代わりに、自社の息のかかったスマートフォンを医師に持たせることができるのです。製薬会社はさまざまなコンテンツを端末に送り込むことができますが、面白そうなのはソーシャル・スケジュールではないかと思います。そのスマートフォン(のクラウド・スケジュール)に医師のためのパーソナライズされたスケジュールを「あの先生も行かれる予定の研究会の案内です」などと登録します。そうすることで、医師は、

「おや、明日の夕方にこんな研究会があるのか、ちょっと行ってみようかな」

となるわけです。この「ソーシャル・スケジュール」が、医師向けスマートフォンのキラーコンテンツではないかと考えています。

 他にも、このMVNOが診療所のWebサイトやドメイン取得、クラウド・メールなども一元的に提供するかもしれません。医師はこのMVNOと契約するだけで、自分のスマートフォンから自院ドメイン名のメールを出したり、自院のブログを更新したりできるわけです。

 専門資格の認証をMVNO業者が代行することが考えられます。エムスリー株式会社が提供しているDoctors Blogは、書き手が医師であることを同社が認証する形を取っているわけですが、MVNOなら、「その端末を使っている人が医師であること」を認証することができます。
 世の中にはHPKIのような公的な電子的医療資格認証システムがありますが、なかなか誰もが使えるところまでいきません。いっぽう、私たちが病院にかかるときは、担当している医師の免許をいちいち確認したりはしません。医療機関がその認証の代行を行っているわけです。
 この、MVNOによる医師の認証は、さまざまな医師専用サービスを提供使用している事業者にとってはなかなか便利なインフラだと思います。(実際には希望者がいるかどうかわかりませんが)twitterやfacebookのこのアカウントは「確かに医師である」ことを認証する手段にもなるでしょう。

おまけ

最近Twitterに書いたことを再掲します。ブレインストーミング時に心の中で唱えるかけ声です。

なんでもバーチャル化、なんでもリアルタイム化、なんでもパーソナル化、なんでもソーシャル化、なんでもゲーム化、なんでもシニア化、なんでもクラウド化、なんでもジオグラフィック化、なんでもタブレット化、なんでもコンセント化。

 こう書いてくるとかなり怪しいのも混じってきますが重要なヒントだと思います。ちなみに「コンセント化」というのは耳慣れないと思いますが、「めんどくさがらずに同意を取って個人情報を使い倒す」ということを意味しているつもりです。

関連続報 携帯電話番号から医療用共通IDをつくる

参考過去記事 日本型PHRはCloudよりも携帯電話でP2P?

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 履歴書の書き方 | 2012/07/12 11:15

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