希釈消毒液で手を洗わないようにすれば、消毒薬の誤注射を減らせる
さきごろ、都立広尾病院で誤って消毒液を静脈注射した医療事故に関連した最高裁判決がありました。これ自体も重要な問題をはらんでいますが、今回は別件です。
この事故は、静脈注射する薬の注射器と手足を洗浄するために注射器に入れて用意されていた消毒液を取り違えたことが発端になっています。これに関してはもちろんいろんなことが言い尽くされており、ネットを検索しても東京都の報告書をはじめとしてたくさんの情報、再発防止策などが読めると思います。これも置いときましょう。
ふと思いついたのは、そこに消毒液が存在しなければ、取り違えは起きなかったということです。報告書などからの私の推測では、このヒビテングルコネートは水で希釈して手や足を洗うことに使われていたと思われます。このような処置は医療現場で以前からずっと行われているわけですが、この数年、消毒液の使用について疑問が投げかけられているのも確かです。傷自体には消毒液が有害になることも多いし、消毒液を入れなくても洗うことだけで効果は同じではないのかということです。
昔の医療現場では、洗面器に希釈消毒液を入れて手を洗うという場面がみられました。今はふつうに石けんで手を洗い、手を消毒するための消毒液スプレーをよく見かけるようになりました。
そこで、希釈した消毒液で洗うのをやめて生理食塩水や温湯で洗うように決めてしまえば、消毒液を使う場面も減りこのような事故は減らせるはずです。もちろん病院から消毒液をすべてなくすことはできません。でも、その消毒液が本当に必要なのかを考えてみることも必要だと思います。使わなくても大差がないのであれば、思い切って使うのをやめることも選択肢です。滅多にないとはいえこのような死亡事故をなくすことができるのですから。
医療に限らず、普段何となくやっていることが「本当に必要なのか?」ということを時々顧みなくてはいけないと思った事例でした。
Apr.19追加
「その消毒は本当に必要か」ということについて詳しく知りたい方は、ご存じの方も多いと思いますが新しい創傷治療-「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して-をご覧下さい。
著者の方とはある学会のポスター会場でお隣だったことがあります。私がプログラムの「その他」セッションの最後であちらはその前だったかも……。
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