メセナの日本語言い換えは必要だ
6月末に、国立国語研究所が第3回外来語言い換え提案の中間発表をおこないました。私としてはこのニュースには当然反応したのですが、ちょうど渡米する機上の人だったので、意見を書きそびれていました。しかし今月中に第3回の最終提案があるようなので、今のうちに書いておきます。
今回の中間発表で話題にのぼった言葉が5つあります。以下はそれって何語?◆語源探索日記◆さんによるまとめです。
・ユビキタス(時空自在)→継続検討ユビキタスは当然私もウォッチしてますが、前回の中間発表で提案した「時空自在」を引っ込めたわけですから、今回は慎重になるのは当然です。
・オンライン(回線接続)→提案断念
・データベース(情報集積体)→提案断念
・フォーラム(公開討論会)→提案断念
・メセナ(文化支援)→提案断念
オンライン・データベース・フォーラムの3つは、日本語として定着しているうえに、いろんな意味に使われるので、一つの単語で言い換えるのは困難でしょうから納得。
しかし、メセナの断念はなぜ?「文化支援」で良いじゃないですか。今回の断念4つのなかで、メセナの認知度の低さは際立っていますし。
報道によると、日本語による言い換えが「わが国に定着しつつある新しいコンセプトの芸術文化支援運動に大打撃を与えるもの」等の反対が企業メセナ協議会等から出たためのようです。でも、当のメセナ協議会のサイトでもこんなふうに説明してるじゃありませんか。
メセナとはなぜそんなに強く反対するのか考えてみました。
日本では、1990年に企業メセナ協議会が発足した際、「即効的な販売促進・広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一環として行う芸術文化支援」という意味で「メセナ」という言葉を導入し、一般に知られるようになりました。その後、マスコミなどを通じてこの言葉が広まっていく過程で、教育や環境、福祉なども含めた「企業の行う社会貢献活動」と、広義の解釈でも使用されるようになりました。
1.自分たちが考えた言葉を言い換えられたから不愉快。
…気持ちはわからないでもありません。
2.わかりにくい表現のままにしておくことで、注目度を保つため。
…これは戦略としてはありうることですね。
3.不況でどの企業もメセナどころではなくなって次々に手を引いている矢先に、注目を浴びたくなかったから。
…これは協議会の公表資料を見る限りそうではなさそうに見えますが。
でも、私の頭にまず浮かんだのは、
4.メセナとか格好のいい言葉は使っていても、実は中身に「新しいコンセプト」も何もない「単なる文化支援」となってしまい悩んでいたところに、国研の提案で痛いところを突かれたから。
という理由です。そう勘ぐりたくもなろうというもの。
私の考えでは、国研の外来語言い換え提案は別に外来語の排除や言葉狩りを狙っているのではなく、言い換え例を示すことで外来語の理解を深めることができるという利点があると思います。反対などしないで、メセナということばが社会のより多くの人に理解される好機と捉え、これをいっそうの啓発に利用すべきではなかったかと思います。
国研も国研です。時空自在もそうでしたが、この程度のことで引っ込めないでほしかったなぁ。雑音を恐れずわが道を進んでほしいと思います。
さあ、これで焦点はユビキタスです。某大学教授あたりからの横槍でこちらも断念…ということだけはないようにお願いします。
2004/9/29 追加
第3回「外来語」言い換え提案の最終発表は9月の予定でしたが、今こちらを見ると10月になっていました(笑)。
2004/10/08 追加
第3回の最終発表がありました。ユビキタスは含まれませんでした。ここで発表があると思って楽しみにしていた私がバカでした。。。第4回は3月以降になりそうです。
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