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2008/10/22

都立墨東病院産婦人科の体制Simulation

今回の「脳出血妊婦死亡」に関する読売新聞の記事に次のような記述がありました。

 「総合周産期母子医療センター」に関する都の基準では、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」とされている。しかし、同病院では、産婦人科の常勤医が2004年に定員の9人を割ってから、慢性的に不足しており、現在は、4人にまで減っていた。

 そんな中、当直も担当していた非常勤産科医が6月末で辞め、7月以降は土日、祝日の当直医を1人に縮小しており、妊婦が搬送された4日は土曜日だった。

 4人というと、24時間1人体制シフトをひくための最低人数です。勤務表を作ってみましょう。日が昼の出勤、夜が16時間の夜勤、△が夜勤明けの休み、▲が休日です。

A

2

2

2

1

B

1

2

2

2

C

1

2

2

2

D

3

1

1

2

この状態でも、4人のうちひとりは週休1日になってしまいます。

 では、墨東病院の条件を作ってみましょう。

平日に夜勤2人を確保するのが条件とすると、夜勤明け休みはなくさざるを得ません。

1.まず、△を日勤に変えます。夜勤明けに日勤を続ける勤務です。△がひとつ残っています。

A

4

2

0

1

B

3

2

0

2

C

2

2

1

2

D

4

1

0

2

2.次に、平日の夜勤を2人にします。▲の前日を夜勤に。

A

3

3

0

1

B

2

3

0

2

C

1

3

1

2

D

2

3

0

2

3.平日の夜勤が2人なのに日勤1人というのはおかしいので、平日の日勤を2人にするように調整します。

A

3

3

0

1

B

3

3

0

1

C

3

3

0

1

D

3

3

0

1

4.実際は夜勤の日に夕方から出勤というのも困難なので、うち2回を朝から来て泊まる「当直」に変え、当直明けに夜勤を入れてみます。

 一番過酷な医師では32時間連続勤務が週1回、24時間連続勤務が週2回、休日1日となります。自宅で眠れるのは週4日。休日をなくして細切れにし、連続勤務を減らす方が現実的かも知れません。私も一人医長の頃は、まる一日休んだのが3ヶ月ぶりなどということもありました。

週間勤務

A

5

3

0

1

88

B

5

3

0

1

88

C

5

3

0

1

88

D

5

3

0

1

88

4週間の超過勤務が192時間。過労死レベルは80-100時間です。

最初の表を再掲します。

週間勤務

A

2

2

2

1

48

B

1

2

2

2

40

C

1

2

2

2

40

D

3

1

1

2

40

 私も今年の春は200時間くらいの月がありましたが、これに土日の呼び出しが加わり、延々と続くというのでは、とても体が持つわけはないです。


 その一方で、中原先生の控訴審では損害賠償を認めない判決が出ました。この判決が現場に与える影響も小さくないかもしれません。

2008/10/24追記

実際の昼間の体制はもう少し余裕があるようです。毎日新聞の記述です。

常勤医の4人に加え、非常勤のシニアレジデント2人、非常勤医師2人、応援の非常勤医師7人で日常業務をやりくりしているという。

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