火曜は日本記者クラブに通う(4)先端医学の映像化
9月から、毎週火曜の夜に日本医学ジャーナリスト協会主催の「医療ジャーナリスト基礎講座」に通っています。全12回のうち9~10回は受講するつもりです。場所は霞が関の日本記者クラブ。予想以上に良い雰囲気のサロンみたいな場所ですが、横目に見ながら会議室に直行です。
今日は「先端医学の映像化」ということで、NHKで人体シリーズを作られた林さんのお話。
放送開始の1988年当時は駆け出しの医者の頃で、仕事が忙しくあまりテレビを見ていませんでした。たまに見たときには「CGにお金がかかっていそう」と思っていましたが、巨匠なき泥船プロジェクトと呼ばれていたとか。当時は「CGが宇宙戦争みたいで子供じみているなぁ」というあまり良くない感想を持ったのですが、中学生にも「おもしろふかく」見てもらうため、毎回CGに宇宙戦争風とか、未来工場風といった意図的なコンセプト作りが行なわれていたそうです。それであの造形にも納得しました。
このプロジェクトの問題は、元になる絵がないことだということで、確かにそうだなあと思います。映像づくりの材料としては実写(内視鏡)、顕微鏡、電子顕微鏡、CGとなるわけです。他に時間を短縮して見せる技法もあります。
一部を見せてもらったのですが、電子顕微鏡写真を、遠くからgoogle earthみたいにどんどん拡大させる映像が見事でした。(最近この感想が多いような気もしますが)20年前ですからね……。CGはマンガでも捏造でもいけない、正確なデータに基づくCGはリアルな感じがせず、見た目主義で作り替える必要があったなどという、貴重なお話が聞けました。
お話の終了後は、おとなしい他の受講者のかわりにいろいろと質問させていただきました。
・胎児の心臓が拍動する映像があるが、撮影した胎児は生まれることはできずに死んでしまったはず。あれが人間の胎児なら倫理上問題なので、だったらあれは動物? 現在ならあのように注釈無しでどんどん何でも出せなかっただろう。「映像はイメージです」「「この胎児は人間でなくネズミです」といった注釈だらけになる。……多くは共同制作したスウェーデン側の撮影。
・リアルなCGの功罪について。現在大河ドラマなどで合戦シーンや安土城などにCGが使われている。それ自体は良いが、ジュラシックパーク等を見てもわかるように、実写なのかCGなのか見分けづらくなってきた。大河ドラマで主人公が山の頂上に立つシーンについて、親子で「CGか実写か」という議論になっている。現代ではこのようなリアルすぎるCGは問題があるのではないか。視聴者が見分けられるよう、リアルすぎるCGは自己規制し、あえてリアリティを落とすべきでは?……あまり気にしていない。
・この20年の間に、医学界では当時の常識が覆された分野もある。その点で20年前の番組が今でも通用することに驚嘆するが、当時の映像が使えなくなったことは?……テロメアなど、一部変わったところはあるが、基本的にはほとんどない。専門家の協力の賜物。
他にも,目に見えないもののCG化は視聴者に先入観を植え付けてしまい、問題があるのではという疑問もありましたが質問できませんでした。
おまけ
なぜこのシリーズが(4)から始まるかというと、他のプロジェクトが忙しくて、(1)と(3)が書けなかったためです。(2)は大阪に行く用事があり欠席。自称ブログジャーナリストとしては、日本医学ジャーナリスト協会の正会員のメンツにかけて、今後過去分を追加していきたいと目論んでいます。
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