医療情報の電子保存4要件には優先順位がある
今回の東日本大震災のあと、再認識したことが2つあります。ひとつめは、医療情報を電子保存する際の4原則には優先順位があるということです。そのことに気づかせてくれたのは、Google Person Finderでした。
このしくみでは、まず誰かが避難所の掲示板に張り出された「避難者の氏名」を写真に撮ってGoogleに送ります。その画像を見ることで、人間は氏名を認識します。この情報は見読性だけを備えていました。
更に、ボランティアがその写真を見て名前やその他の情報を入力しました。その結果、生存者と避難所のデータベースができました。ここでこの情報は検索性も得たわけです。
この災害時、その情報の完全性や機密性は特に問題とならなかったようです。
人の生死が問題となったとき、まず必要とされたのは見読性、次に付加されて威力を発揮したのは検索性でした。そして次に重要なのは、その情報が確かなものであるという完全性。そして今回最も重要でなかったのは機密性でした。
医療の現場に置き換えてみても、同様なことが言えるのではないかと思いました。意識不明で救急搬送された患者の血液型情報や感染症・アレルギー情報など、患者の基本情報の4要件を分けて考えたとき、まず必要なのは見読性なのです。検索性や完全性は確保されているに越したことはありませんが、優先順位としてはあとになります。そして、機密性はしばしば邪魔になるのです。
ふたつめに再認識したのは、政府の政治家や役人の行動です。
放射能が暫定基準値を越えた作物などに対して、「ただちに健康に影響は無い」と言いつつ広範囲の出荷停止をしたりしています。実は「大気中核実験が頻発していた1960年頃の汚染度に比べれば、通常の生活では何ら問題ありません。」と言いたいところですが、「子供が甲状腺がんになったら責任を取れるのか?」と詰め寄られると、安全策に逃げてしまう。本当のところは、「大丈夫です、必ず国が責任を取ります」と言うべきだと思います。過去の公害や薬害で、役人が当面の責任回避や国の面子を優先した結果、結局問題が先送りされて深刻化し、最終的に社会が支払うコストは莫大なものになってしまった歴史から学べないものかと思います。
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