銀塩フィルムによるデジタルデータ・アーカイブとTCA(Total Cost of Archive) 2/3
銀塩フィルムによるデジタルデータ・アーカイブとTCA(Total Cost of Archive) の続編です。
デジタルデータを30年以上の長期にわたってアーカイブ保管するメディアとして、ETERNA-RDSのような映画用白黒アーカイブフィルムが使えるのではと思います。
後半部分は、映画用フィルムのデジタルデータ保存メディアとしての利点についてもう少し書きたいと思います。
TOSを思い出させる映画フィルムのアクセス性能
パソコンの外部記憶媒体の歴史を振り返る中で、私にとって忘れることができないのはTOS(Tape Operating System)と呼ばれるカセットテープ記録の最高峰です。
パソコンの外部記憶としてのカセットテープの性能は、300bpsから始まったと思います。オーディオ用でないデータ用のレコーダーやテープも出てきましたが、私が使っていたシャープのMZ-80Bでは、電子制御の内蔵レコーダーで2000bpsの記録が可能になっていました。さらにAPSS(無音部分検知つき早送り)を使って、複数のプログラムやデータを入れたテープから、目的のものを高速に探し出す機能がついていました。APSSで頭出しをしてヘッダを読み、目的のデータと異なれば次の頭出し…といった機能があり、他メーカーとの間に歴然たる差がありました。しかしその上を行ったのがTOSでした。
以下は記憶に頼った記述なので実際と異なるかもしれませんが、TOSではテープの冒頭部分にヘッダ情報を記録する領域を設定しておき、そこに記録データの情報とテープ上の絶対位置(テープカウンタ情報?)を記録していました。絶対位置を知っているということは、APSSのように磁気ヘッドをテープに接触させて早送りする必要がないため、最高速での早巻きができます。APSSが5倍速だとすると、30倍速くらいでしょうか。さらにTOSはOS(SHARP BASIC SB-5520)の拡張機能として動作し、このヘッダ情報をメモリ上に読み込んで利用していました。
標準のシステムでは、load "prog-A"という命令を打つと、テープの最初に記録された情報を読みに行き、読み込んだデータが"prog-A"と一致しない場合は「APSSで次の頭出し→読み込み開始」という動作を繰り返します。しかしTOSでは目的データのテープ上の絶対位置をシステムが知っているので、その位置まで全速でテープを早送りし、目的のデータの冒頭から読み込むという動作が出来ました。
OSという名を冠している以上、テープ上のデータの消去や追加も、既存のデータを消すことなく出来ました。自分で空き領域を探して、データを書きに行きます。これはそれまでのカセットテープ記録史上ありえなかったことです。速度を別にすれば、フロッピーディスクと同様にデータの入出力ができたのです。単にコマンドを打つだけで、このプログラムが自動でテープを早送りしたり巻き戻したり、読み書きしたりしているさまは、APSSに慣れた私の目にも、まるで生き物のように見えたものでした。おそらくこれがパソコン用カセットテープ入出力機構の到達点だったと思います。
さて、話を近未来の銀塩フィルム記録に戻しましょう。映画のフィルムの場合、「途中の25,245コマ目から映写開始」といった需要はまずないと思いますが、デジタルデータを記録するとなると、アクセス性能が重要になります。映画フィルムの場合は、磁気テープでなく光学制御が出来るため、より正確な制御が簡単に出来るはずです。TOSと同じくフィルムの冒頭にヘッダ情報を焼きこんでおくことで、求めるデータのあるコマまでひと飛びに早送りできるでしょう。
情報アクセスの精度
映画フィルムにデータを二次元記録するということは、読み出しの精度が重要であるということは前回も述べました。しかしもともと映画フィルムと映写機の組み合わせは、とても高い精度の位置決め性能を持っているはずです。そうでなければ映画館でぶれない映像を映写できないからです。
もうちょっと書くつもりですが、この辺りで公開します。
過去記事
銀塩フィルムによるデジタルデータ・アーカイブとTCA(Total Cost of Archive) 2/3 続報
銀塩フィルムによるデジタルデータ・アーカイブとTCA(Total Cost of Archive) 3/3 (Bits on Film とTotal Cost of Archiving)
リンク: 舞子の浜 私のコンピュータ事始め.
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