オンライン限定医師免許への道
(中身はまだ書きかけですが、ようやくそれなりのタイトルを思いついたので公開します)
以前オンライン学会の参加費を考えたときに、「ポストCOVID-19時代、もう元には戻らないことがある」という事実を実感した私ですが、遠隔診療(オンライン診療)は、そうでもないのではと思っていました。これは私が普段担当している形成外科の分野が、ほぼ遠隔では成り立たないこともあるのですが。たとえば、毎日のように行っている手術やけがのあとの抜糸はこうなります。
(画面越しに)ああ、傷はくっついているみたいですね、では糸を切っていきましょう。ピンセットとはさみは入手されましたか?あ、用意がない。そうですか、それでは爪切りはありますか?ある。では指の爪で糸を上手につまみあげてください。そこで結び目の下の糸を爪切りでパチンと切って。え、できない?そうですよね、右手を縫ってる糸を左手でつまんだら、爪切りを持つ手が足りませんね。じゃぁまずご家族か誰かにやってもらってください。え?怖くてできないって?そこは頑張って説得して。あぁ、やってくれそうですか、それは良かった。それでご本人は左手でスマートフォンを構えて、そう。じゃぁ1本目、そうそう、初めてにしてはとてもうまくできました。で、2本目。(♪ゴトン)どうされました?血が出た?傷の所を見せてください。ああ、抜いたあとの穴から血が出てますね。こういうこともたまにあるので、心配は要りませんよ。折り畳んだティッシュペーパーかなにかでしばらく押さえておけば止まりますから‥…。血は止まったみたいですね。3本目。「イタッ」今度はどうされました?あぁ、爪切りで皮膚を切っちゃったんですね。うん、縫う必要はなさそうなので、これもしばらく押さえておいて下さい。あら、すみません、時間切れになりました。残りの糸も今の要領で抜糸しておいてください。明日また同じ時間にオンラン診療できますか?あ、大丈夫ですか。ではまた明日。えっ?すみません、明日はまた別料金となります。よろしくお願いします。。。
このように、実質的には無理です。
遠隔診療(オンライン診療)は、「寿司の宅配」というか「すしの出前」みたいなものだと思っていました。当然リアルの店舗より質が落ちるので、一定の需要はあるものの、リアルの店舗の経営を圧迫するほどではないと。
しかし、報道や世の中の趨勢を見ていると、「寿司は宅配で充分」という人が、私の感覚よりずっと多いみたいなのです。これには驚いています。
<日本経済新聞から引用>
課題の一つが医療界がこれまで消極的だったオンラインを活用した遠隔医療だ。ビデオ通話を活用したオンラインや電話による初診からの遠隔診療は時限的に可能となった。だが実施できる医療機関は少数派だ。直接の通院を避けたい患者は多く、こうしたニーズに早急に応える必要がある。
さらには、オンライン診療の適用範囲拡大を推進する医師もけっこういるみたいです。これは「宅配すしの推進を」というプロの寿司職人に例えられます。これって、職人全体としての自らの存在意義を危うくすると思います。AIと寿司ロボットに代替されちゃいますよ。
---以下は書きかけです----
私の感覚では、「症状も安定しているし、前の薬の継続でいいや」という人は、遠隔でいいと思います。でも初診はどうかな。
このことは、これまでに多くの医師が「何か」を怠って来たからだと思います。
「何か」とは聴診、打診、触診など、非対面では不可能な診察です。私自身はあまり実感できないのですが、患者が医療機関を受診したときに、目の前に座って話を聞いただけで「うん、じゃあこの薬出しておきますね」といった感じで、患者に指一本ふれずに終了する、言い換えればセッションをクローズしてしまう医師が少なくないのだろうと思います。
だから、患者側も「初診からの遠隔診療」にも抵抗がなくなってしまうのです。受診時に必ず丁寧な診察が行われていれば、「テレビ電話で問診+ほぼ視診のみ」という診療では怖くて受け入れがたいはずです。
以前から多くの医師が「非接触」で診療していた証拠を突きつけられているのです。でも初診時には、血液検査やX線、CT、超音波など画像検査も行なわれることが多いと思います。それもなしで処方、でだいじょうぶなのでしょうか。
将来はショッピングモールに、独立した放射線検査室や、血液検査室が作られるようになるのでしょうか。そうなってくると人違いの検査などを防ぐ仕組みの整備など、いろいろやることが増えそうです。
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対面診療の必要性を皆が感じないのか。診療もオンライン(非対面)でいいじゃないかと思っている人は両側に多いのか。
オンライン診療をする医師は、自動運転車の運転席に座っている人に似ている。自動運転車の事故事例からも、とっさの時にカバーできるかは大いに疑問。よほど完全に機械任せの方が安全なのでは。
旅客機の操縦士は既にそうなんじゃないか。737-MAXの事例。技量の保存継承の必要性。
さらにオンライン診療を自動運転車と比較してみる。オンライン診療をもてはやす人は、自動運転車に過度な期待をかけているのと同じではないか。そもそも家を出て車に乗るところまで自力でできない人は、自動運転車に乗り込めない。問診視診とごくごく限られた検査だけで、診療と言えるのか。
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「新しい生活様式」
後戻りできるのか
映画館を否定する映画人
ライブスポーツも無観客でリモート応援
音楽も配信のみでokなのか?近年むしろライブが隆盛したのではなかったか。
動物園も動画で充分
レストランや居酒屋の淘汰
行き着く先は「オンライン限定医師免許」となる。
各方面からの政治への圧力次第で、規制緩和が進んで、柔道整復師のような医療関連他職種でもオンライン診療ができるようにされてしまうかも。
しかし、その業務内容はAIで代替可能ではないのか。
結局のところ、オンライン診療で済ませられる分野の医師は淘汰されていくのでは。職人のような役割の医師は代替不能で需要が減らず、しぶとく残るだろう。
医療界としては、遠隔診療(オンライン診療)の不完全性・危険性について、もっと声を上げるべきでは。
(まぁ私自身はオンライン診療を迫られる場面はまずないので、特に困らないのですが)
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