皆「医療ビッグデータ」というけれど、正しく理解されてるのか?
医療マネジメント学会の学術総会のため、京都に来ています。メインテーマが
となっています。
最初にこのテーマを見たときに、「関係者の皆さんは、ビッグデータの本質をどこまで理解されているのだろうか?」という疑問がまず浮かびました。そこで、「そもそもビッグデータの本質とは何か、医療分野では正しく理解されていないのでは?」という演題を応募しようと思いました。でも、たぶんこの学会ではまともに取り合ってくれないだろうということで、応募はせずお蔵入りとなったのですが、京都に来てそのことを思い出したので、当時のメモを公開します。
「ビッグデータ」などカタカナ語の定義の曖昧さが「ガラパゴス化」を招き進歩を妨げる
用語の定義があいまいなため、議論がかみ合わない場面が、かつての本学会でも見られた。クリティカルパス、リスクマネジメント など。
たとえば「薬局でのコンプライアンス問題」という言葉を耳にしたとき、ある人は「患者に渡った薬剤が指示どおり飲まれているか」という問題だと捉え、人によっては「薬局が法令を遵守しているか」という問題と理解する。このように定義の曖昧なカタカナ語や横文字語の安易な使用が、本邦ではしばしばかみ合わない議論の原因となってきた。そのため関連分野の進歩が遅れたり、国際的な定義と食い違う日本限定の「ガラパゴス化」した概念となることもある。
電子カルテ、Patient Flow Management、Aiが代表例であるが、「ビッグデータ」にもその兆しがみられる。本発表では、過去の医療分野での反省例を分析し、カタカナ語の弊害を検討する。
一般論として、後発者は新語の定義を拡張したり、逆に定義の範囲を狭めたりしやすいため、初期段階での原義が尊重されるべきである。「悪貨が良貨を駆逐する」という概念に似ている。
定義を知らずに使うと痛い目に遭うため、カタカナ語を使うときは、その用語の定義を自分がどう理解しているかを明らかにした上で論を進めるべきである。
(繰り返しになりますが)こんな演題を出しても、採択されない可能性が高そうなので、今の職場での外来予約システムの工夫をポスター発表しています。
ちなみに、月刊新医療で続けさせてもらっている連載では、「新・医療IT用語辞典」の2012年3月号と、「院長の今さら聞けない医療IT」の2017年10月号が「ビッグデータ」の回になっています。さわりをこちらにも。
2012年3月号
■結論
「ビッグデータ」とは、従来はコンピューターの性能限界のために扱えなかった、大量で、非定型のデータを含む、リアルタイム性のあるデータのことです。これをうまく処理することで飛躍的革新が起きつつあります。
2017年10月号
■今月の回答
「ビッグデータ」とは単にデータが大きいだけでなく、「多種で大規模だが形式が整っていない非構造化データがリアルタイムに蓄積されること」です。しかし医療分野では一部の特性を欠く場合もあり要注意です。
図表はこちら
メイン会場で自分の目で確認するか、無駄足を避けて他の会場にいくか、決めかねています。
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