2024/07/03

生成AIとは、ミノフスキー粒子である

「論理的にはおかしいんたけど、妙にしっくりくる」という言葉があります。

その代表として、私が思い出すのは「サガン鳥栖とは池田圭である」です。

 現在JリーグのJ1でがんばっているサガン鳥栖の選手でまず思い出すのは、現在も金沢に在籍している豊田陽平選手や、「ミスターサガン鳥栖」と言われた高橋義希選手だと思います。海外で活躍している鎌田大地選手もいます。
 しかし、私もそうですが、サガン鳥栖のサポーターであれば、あるサポーターがゲートフラッグとして掲げた「サガン鳥栖とは池田圭である」を知らない人はいないでしょう。サガン鳥栖がトップカテゴリーのJ1に昇格する頃から10年ほど在籍した池田圭選手は、ゴール数など目に見える数字は残していませんが、その泥臭さとひたむきさ、献身性という点で、サガン鳥栖というチームを象徴する存在、このチームの最も大切な部分を体現する選手でした。
 チーム創設以来、多数の選手が在籍したなかで、チームのことを一人の選手で代表させるというのは、どう考えても無理があるのですが、「サガン鳥栖とは」の答えに「池田圭」をもってくると、「確かにそうだ」と納得する人が多いと思います。

 前置きが長くなりました。最近巷で話題の「生成AI」について考えるとき、最近私の頭に浮かんだのが「生成AIとは、ミノフスキー粒子である」なのです。

 論理的にはまったく辻褄が合いません。ミノフスキー粒子とは、「機動戦士ガンダム」に出てくる架空の設定で、「散布することで通信障害を引き起こし、レーダーを妨害する不可視の物質」です。この設定が存在することで、モビルスーツ同士が互いに相手を目視する距離で接近戦闘を行なう世界観が現実味を帯びたわけです。
 21世紀の現実の戦争では、既に遠距離ミサイルや無人機やドローンなどが実用化されています。仮にいま現実にミノフスキー粒子が登場してくれば、現在の兵器や戦争の姿は、根本から変わってしまうに違いありません。いわば「ゲームチェンジャー」です。

 病院での生成AIの事例も耳にするようになりました。けっこう使えそうです。今まで勤めた医療機関の中で、会議の議事録をきちんと残せていた施設を知りません。私がエクストリーム・ミーティングで議事録を残した会議は別ですが(笑)。でも、生成AIの助けによってできるようになっているのが驚きでした。おそらくはハルシネーションの問題も回避できそうに思えました。
 医療機関以外での生成AIの応用については私が語るまでもありません。今までの仕事のやり方が根本から変わってしまいそうです。

 そのような思いを表現する言葉として、私もフラッグを掲げたいと思います。

「生成AIとは、ミノフスキー粒子である」

多くの人が納得してはくれないと思いますが、一部の人の腑には落ちるかもしれない。そんな思いとともに。

20240601

 

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2022/04/22

NFTの日本語訳をつくろう

副題:NFTの和訳は、非代替性トークンでなく「電子原本証票」

最近、報道などでNFT ( Non-fungible token ) という語をよく見かけます。日本語に言い換えると「非代替性トークン」ですって???
 日経XTECHの説明

 横文字の説明に、なじみの薄いカタカナ語を用いるとは最悪。でも、代わりの日本語表現が出てこないところをみると、よほど難しいのかな。これは挑戦しがいがありそう。それでは考えていきましょう。

<トークンといわれても>
 なんといっても酷いのは「トークン」です。トークンとは何か理解している人が日本にどのくらいいるでしょうか。tokenの和訳を辞書やネットで調べてみると、しるし、証拠、兆候、表象、証拠、記念品、代用貨幣、引換券、商品券などが挙がります。
 私の個人的なイメージ、すなわち旅行や留学で米国に居たとき見聞きしたtokenというと、まずは四角い穴の空いた金属製のコインみたいなものです。地下鉄ではそのtokenを購入し、乗り場入口の回転ドア脇の投入口に入れると、回転ドアのロックが外れて入場できる仕組みでした。遊園地の乗り物でも同じ金属製のtokenが使われていました。また、紙製の回数券のような乗り物券もtokenと呼ばれていた記憶があります。tokenは抽象的にはそのようなイメージで間違っていないと思います。
 さて、NFTのトークンとは、ブロックチェーン技術を用いて「非代替性」を証明するものでしょう。前述した訳語例にはないのですが、tokenの抽象イメージから考えを巡らすと、「証票」という語に思い当たりました。「証票」を辞書で引くと、「あることを証明するためのふだ・かきつけ」とあります。私の持つイメージにはぴったりとはまります。

<非代替性というのも耳慣れない>
 つぎはnon-fungibleを非代替性と訳す件ですが、要は「あるデジタルデータがこの世に一つしか存在しない」といった意味ですから「原本性」としても特に支障はなさそうに思いました。

 以上から、NFTのより良い直訳は「原本証票」となります。ただ、これではデジタルの世界での語であることがわからず、紙のような実物を想像してしまいます。ですから原語にはない「電子」をつけました。電子署名という言葉も既存ですし。

<結論>
NFT ( Non-fungible token ) の日本語訳として「電子原本証票」を提案します。

 ここで面白いなと思ったのは、ブロックチェーン( block chain )は単に「分散型台帳」と訳されていることです。こちらは電子とかデジタルという意味がついていません。それでも大丈夫なのは、紙など現物の台帳では、分散していると役に立たないからです。

 ちなみに、Googleで"原本証票"を検索すると"原本証憑"を推奨されます。証憑というのは取引の世界ではよく使う語のようですが、私のような素人には読めない、意味もわからないと思ったので、「証票」としました。

<おまけ>
 新聞などの和訳(?)見て、ずっと「情けないなぁ」と思い続けていたのですが、ついに自分の手で終止符を打とうと決心しました。これは「機種依存文字」に勝るとも劣らない業績になるかな?

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2021/11/17

DXのXとは「変身」である

いままで、DX (Digital Transformation)のうまい日本語意訳として、岡田悠偉人先生の「文化の更新」動画はこちら)を使ってきたのですが、人の受け売りでは若干情けないなぁと内心思っていました。

最近ようやく、シンプルで腑に落ちる表現に到達したので、紹介します。

ひとことで言えば、

DXとは「デジタル技術による変身」

です。これがもっともシンプル。X(transform)の和訳は素直に「変身」で良いのです。

ただこれだとデジタルの解釈が曖昧なのが気になります。デジタルを使わない表現も今後考えたいと思います。

岡田悠偉人先生が講演で用いておられた攻殻機動隊のたとえが大好きなのですが、私は仮面ライダー(本郷猛)の世代なので、自信を持って「変身」を勧めたいなと思っています。

 

(毎度のことながら書きかけ公開、そのうち追記、です)

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2020/10/06

皆「医療ビッグデータ」というけれど、正しく理解されてるのか?

医療マネジメント学会の学術総会のため、京都に来ています。メインテーマが

「病院ビッグデータ革命 BIG DATA Revolution」

となっています。

最初にこのテーマを見たときに、「関係者の皆さんは、ビッグデータの本質をどこまで理解されているのだろうか?」という疑問がまず浮かびました。そこで、「そもそもビッグデータの本質とは何か、医療分野では正しく理解されていないのでは?」という演題を応募しようと思いました。でも、たぶんこの学会ではまともに取り合ってくれないだろうということで、応募はせずお蔵入りとなったのですが、京都に来てそのことを思い出したので、当時のメモを公開します。

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2020/04/19

テック国語学)カタカナ語を多用する専門家は要注意

新型コロナウィルスの蔓延に伴い、クラスター、オーバーシュートなど聞き慣れないカタカナ語が巷に溢れるようになりました。クラスターでなく感染者小集団、オーバーシュートでなく感染爆発と表現すれば済んだはずです。

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2020/02/13

テック国語学の夜明け

ずっと考えを温めていたのですが、とりあえず本日、「テック国語学」という学問分野を立ち上げることにしました。


私は従来から、「ユビキタスの和訳語をつくろう」「アウトソーシングの反対語をつくろう」「認知症でなく認知障にしよう」「死亡時画像病理診断をAiと名付けて大丈夫か」「アップコーディングの正しい言い換え語をつくろう 」「長年使った遠隔診療をオンライン診療にして大丈夫なのか?」「遠隔診療をオンライン診療と⾔い換えて良いのか(PDF)「遠隔診療」を、定義があいまいな 「オンライン診療」で⾔い換えて良いのか(PDF 期間限定) 次世代医療基盤法はやめて医療情報匿名化活用法にしよう」など、科学技術分野での、より良い用語のあり方を提言してきました。


たまたま今日こんな記事を目にしました。
分かりにくい重要語の筆頭 「Virtual」の受け止め方

そうです、virtualの和訳として「仮想」が広まってしまったことが、わが国の科学技術の発展に幾ばくかのブレーキをかけてしまったのです。最初に「仮想」と名づけた人を批判したくはありません。でも、virtualの和訳は「あたかも」「まるで」の方がより良いはずです。どちらも副詞ではありますが、「可視化」を「見える化」にできる知恵があるのですから、virtualの和訳として「あたかも」が定着するよう軌道修正できれば、より多くの人がその本質を理解できたはずなのです。

このような例を減らすべく、わが国での科学技術の発展のため、より良い日本人向けの用語を研究する分野が、「テック国語学」です。当面、これを私のライフワークとして楽しめそうです。

でも、「看板と理念が矛盾してるじゃないか!」と多くの人が感じると思います。そうです。「テック」の良い日本語訳をまだ思いつかないのです。でも、「○○テック」が流行する現代では、この名前の方がとおりが良いと思っています。まぁそんな自己矛盾を抱えた学問も、ご愛敬かと思います。

本日、「テック国語学会」「テック国語学研究所」も開設しました。よろしくお願いします。

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2018/02/10

長年使った「遠隔診療」をオンライン診療にして大丈夫なのか?

厚生労働省の会議で、「遠隔医療」のD to P部分、いままで「遠隔診療」と呼んでいたものに代えて「オンライン診療」という用語が正式採用となったみたいです。「遠隔医療」の語のほうはそのままです。
オンライン診療って、概念をきちんと定義できてるのか、理解して使っているのかとても心配しています。

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2018/02/03

「次世代医療基盤法」はやめて「医療情報匿名化活用法」にしよう

「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」の略称が、内容とあまりにかけ離れた「次世代医療基盤法」となったままのようです。
 いったい誰がこのような略称を持ち出したのか、知らないし調べたくもないのですが、未だにこの悪呼称が生き残っているようです。すぐに改めるべきです。このままでは、将来本物の「次世代の医療基盤を定める法律」を作ろうとしたときに、関係者みんなが頭を抱えることは必至です。

 

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2016/04/22

入院前後患者支援をPFM(patient flow management)と呼ぶのは誤解の元

かつて抄録集の「クリニカル」を全文置換してたこともある医療マネジメント学会の総会に来ています。

 

以前、あるメーリングリストで「アメリカで流行っているpatient flow managementをどうしてる?」という問いかけがありました。英語の感じから、外来患者の待ち時間短縮関係かなと思ったのですが、ネット検索してみると、それで間違いないようです。今の職場では、待合室に番号表示もあるし、検査結果が出たかが電子カルテの患者一覧ですぐ把握できるので、欧米に比べ進んでいると思いました。欧米ではERのフローを管理するのが主目的みたいです。そういえば昔米国のERで長く待たされました。もともと日本は病院の外来患者数が米国などとは比較にならないほど多いので、進化するのが当たり前です。

 

 ただ、驚いたことに日本ではPFM(patient flow management)という名で全く別の意味で使われているらしいことを知りました。

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2013/09/23

2と3の間の大きな隔たり(1)ICTかITか 2.0

以前から、なぜ自分が「ICT」という言葉が嫌いで「IT」を好むのか、なぜ「医療3.0」というフレーズに違和感を感じるのかうまく説明できなかったのですが、新聞の書評に出ていたThink Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学という本を読んでみて、なんとなく納得がいきました。それらには余計なものをそぎ落とせる余地があるのだと思います。この本で気に入った言葉に「シンプルの杖」というのがあります。そう、なんでも「シンプルの杖」に打たせてみれば良いのです。iPhoneの前面ボタンが1つしかないように。

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